ことばには《力》があります
介護の現場で交わすひとこと、ひとこと──。
それは〈意思疎通のための道具〉を超えて、相手の尊厳を守り、心を支え、そして生きる力を引き出す“ケア”そのものです。
「拒否」ということばに感じる違和感
施設でも在宅でも、こんなやり取りはありませんか?
「今日は入浴拒否がありました」
「○○さんは介護拒否が強いんです」
“拒否”とタグを貼った瞬間、
- わがままな人
- 協力的でない人
- 手間のかかる人
――そんなイメージが付きまといます。
でも、本当にそうでしょうか?
“拒否”が生まれる背景
介護スタッフはタイムテーブルに追われ、複数のタスクを同時進行。
「午前10時〜11時半で20名を入浴介助」といった現実の中、
私たちの都合や計画が優先されやすい環境にあります。
すると、ご本人の「今は入りたくない」という大切な意思表示が
**“非協力的” “拒否”**と片付けられてしまうことも……。
院長のひとことが変えた視点
在宅医療クリニック勤務時代、朝礼で耳にしたことばが忘れられません。
「“拒否”ではなく、“希望がない”と言い換えてください。」
わたしの胸にすとんと落ちました。
- 相手を主語にする
- こちらの都合を脇に置く
たったそれだけで、ことばの温度が変わるのです。
心構えを、ことばにのせて
もし私たちの介護観が
「その人の人生と意思を尊重したい」
というものであれば、その想いをことばで体現しましょう。
忙しさや慣習に流されてしまうと、心はすさんでしまいます。
実践ヒント:まずはひとこと置き換えてみる
Before | After(思いやり表現) |
---|---|
「入浴拒否がありました」 | 「入浴を希望されませんでした」 |
「リハビリに非協力的です」 | 「リハビリを望まれていません」 |
この“小さな翻訳”こそ、
相手の立場に立つ支援への第一歩です。
まとめ
介護は「人を管理する仕事」ではなく、
その人の生きる力をそっと後押しする仕事。
ことばを見直すだけで、支援の質はぐんと深まります。
- ご利用者さまの幸福度・QOLが向上
- 介護する私たち自身も仕事の意義を実感
今日から、思いやりのあることばを選んでみませんか?
あなたのやさしさと凛とした芯の強さが、ご利用者さまの心に届きますように。
「接遇と言葉で癒やす」方法をもっと学びたい方へ──
▶︎ 接遇セラピー講座 の詳細はこちら講座内容