介護の仕事にやりがいを感じられない。今の職場で仕事を続けられそうにもない、でも転職は厳しい。日々行き詰まりを感じているあなたへ、介護現場に20年以上勤めている私の経験をもとに、明日の仕事に少しでも楽しさを見出せるための秘策をお伝えします。

介護士のやりがいは何?

今は介護職としてやりがいを感じられない。一方、やりがいを感じていた頃があったとすれば、何を喜びとして働いていたのでしょうか。

ここでは、介護職のやりがいについて、ふたつの調査をもとにまとめました。

感謝され、相手の笑顔が見られること

ご利用者ご家族から「ありがとう」「助かった」という言葉をいただけること。目の前の方の笑顔をみられること。自分の行った関わりが相手の助けや安心につながっていると感じられる瞬間。これは介護の仕事で何よりのやりがいです。

知識や経験を得て自分自身が成長できること

身体介助の技術、コミュニケーションスキル、医学的な知識、認知症の様々な症状に対する対応法。大正昭和の生活・文化・芸能に関する雑学。介護の現場で働くことは、ご利用者や他スタッフを通じて知識や経験をいただき、成長していくことと言えます。

相手のために役立っていると感じられること

誰かの役に立てた、というのはうれしい事です。その気持ちの背景に、例えば「周囲に認められたい」とか「他者の役に立つことで自分の価値を感じる」というように、自分自身の満たされていない心理が隠れている場合も考えられます。

とはいえやはり、役割がある・役に立てる・人のために動くというのは、やりがいにつながります。

介護職にやりがいがないと感じていたわたしの暗黒時代

現場歴20年以上のわたしですが、きつさや悔しさから「もう辞めたい」「いつ辞めよう」とやりがいを見失ったこともあります。

やりがいについて語る以前に、ご利用者に危険を及ぼしてしまい、クビになってもおかしくない状況を招いたこともあります。外出行事での行方不明と捜索・リフト車両内での車いす転倒、「家にこもらない方がいい」という正論の押し付けにより壊した信頼関係。

色々とありますが、ここでは、やりがいをなくした出来事をシェアします。

厳しい介護主任の重圧に耐えられなかった夜勤

介護士2名、看護師1名で夜勤をしていた頃、ペアの介護士が誰かによって気持ちが大きく左右されていました。

プレッシャーを感じる相手は、てきぱき仕事をさばき経験も豊富。口調が強く、「相手に寄り添う」以上に「とにかくこなす」その相手であるベテラン主任との夜勤は、重い気持ちで現場に入っていました。逃げ出したい気持ちもありました。

主任はわたしに「入居者と話していないで、時間通りに業務を進めて!」と言いました。「介護って目の前の相手より業務が優先なのか?」と疑問を抱いた体験は、介護者向けの講座「接遇セラピー」の誕生に深くかかわっています。

講座内容|接遇セラピー|言葉とふるまいで心を癒す

今、主任の顔を浮かべると、怖い顔ではなく笑顔なのです。強い口調の中に責任があったのだなと感じます。鍛えて下さりありがとうございました、と伝えたいです。

倫理観や介護観の違いに怒りが爆発した日

院内の勉強会で、先輩理学療法士がこう言いました「そんなの理想論やろ」と。
身体拘束廃止に関する内容で、わたしがまとめた資料を発表し終えた瞬間でした。

わたしは「将来、おまえを抑制帯でぐるぐる巻きに拘束してやる!思い知れ!」と心の中で叫びました。老健に4年間介護職として勤めたのち、養成校を経て作業療法士の資格を取得したあとの出来事です。

膝や股関節の手術を行う整形外科の急性期病院。全身状態の管理、手術部位の感染予防や治療計画に沿った対応が重視されます。点滴を外さないよう、抑制帯を使用することもあるのです。
この環境下、自身のリハビリテーションのスキルが及ばないことも含め、治療方針に気持ちを合わせていくことは難しかったです。

それでも科長は、わたしの特長(仕事がスローでマイペース、安心感)を大事にしてくれました。リハビリテーションが治療計画通りには進みづらい、認知症のある方・超高齢の方・精神疾患を持つ方を担当、関わらせていただきました。

スキルアップの学びを否定され失望した出来事

「生活行為向上マネジメント」を聞いたことはありますか?作業療法士協会が開発した、作業療法の実践・支援の手法です。

「したい」「する必要がある」「することが期待されている」生活行為に焦点をあてて、本人との合意形成のもと、生活課題の解決をめざしていきます。

これを学んで、当時所属の外来リハビリの勉強会で伝達講習を行ったところ、上司から「そんなの精神科のすることやろ」と言われました。

介護分野では、スキルアップのために自主的に学んで認定や資格を取ったとしても、給与に反映されることはありません。関係があるのは、国の定める施設運営基準に必要とされる資格を持っているかどうかなのです。例えば、何人の利用者に対して看護師何名、〇〇を算定するには介護福祉士の資格を有するものを配置すること、といった具合に。

給与に関係なくても、「より専門性を高めたい」と学びを続け、その当時の新しい手法を上司に否定されたこと。それは、所属が変わってからも、思い出す度に悔しさと失望に近い怒りが湧いてくる出来事でした。

介護職が楽しいと思える秘策10選

ここに記す秘策10選は、やりがいを持って働くために、介護現場を20年以上経験した中で得た、喜びの見つけ方や心構えをお伝えします。

今の仕事をやめるかどうか迷っている、迷っているけど動けない。行き詰まっている状態のあなたにとって、やりがいや楽しさを見出すヒントがあればと思います。

①相手の心身の変化をいち早く察して対処する

医師やその他の職種以上に、相手の様子や生活をみているという自負を持って関わる。「何かいつもと違う」と感じた時看護師や上司に報告し、病気の兆候をいち早く捉えられた時、「この仕事をやってきて良かった」「自分は役に立てた」「経験してきたことが役立った」と誇りを感じます。

例えば着替えの介助する際、小さな発疹を見つけ報告したところ、帯状疱疹の疑いあり、迅速な受診と診断につながった。このような経験を持っている介護スタッフは多いのではないでしょうか。

②関わり方や声かけの工夫で相手の行動を引き出す

どんなに誘ってもお風呂に入らないという相手。「背中に薬を塗りますから行きましょう」という伝え方の工夫で心が動く相手もいれば、だれがどのようなアイディアを出しても、絶対にお風呂を希望しない、手ごわい相手もいます。前回のお風呂は期間半年以上前…。(入浴回数の法的義務がないサ高住での話です)

そのような方を強制的な方法ではなく見事お風呂に誘えた時、「っしゃー‼‼」とガッツポーズです。お風呂に入ることが当然であるという価値観を脇においたとしても、相手の心が動いた瞬間に立ち会えることは悦びです。リンク

③これまで聞いたことのないエピソードを相手から聴く

こちらが問いかけをし、相手が昔のことを思い出す中で、「職場の〇〇さんから誘われて散歩をはじめたら、ひどい腰痛が治った」など、見ず知らずの〇〇さんまでが話に登場。

普段同じ話ばかりをする相手が、これまでこちらが聞いたことのないエピソードを具体的に思い出し、聴かせてくれた時は心が躍ります。相手を知れた喜びと同時に、よくぞこの話を引き出す質問ができた、という自分への賞賛が湧くのです。

④困難な在宅環境からの移動を、スキルを用いサポートする

わたしは通所サービスでの勤務経験が長いです。ご自宅へご利用者を迎えに行き、車いす移動であれば、部屋からリフト付き車両までを介助をして施設へ向かいます。

ご自宅の環境はバリアフリーでない場合が多いです。スロープなどの福祉用具をレンタルしていても、場所によっては腕力や高度な技術がなければ通過できないようなところもあります。

中でも、記憶に残っているのは、車いすの片側の車輪を浮かせながら狭い直角の廊下を曲がる、というミッションのあるご自宅。ご本人の体格も大きく、パワーと繊細さと同時に求められましたが、それをさらりとした表情で対応し送り迎えができる度に、安堵とやりがいとを感じていました。

⑤おひとりとの関わりを、他者との関係で活かす

「大利根月夜」という歌が大好きという95歳の男性がおられ、わたしは動画を見ながら覚えました。これまでに関わったご利用者から「この曲が好き」「この歌手が好き」と教わるごとに昭和初期の歌のストックが増えていきました。

そうして覚えた歌を別のグループや、施設外の地域サロンなど場所を変えて歌うと、「懐かしい」「思い出した」など、ご参加者から想像以上の反応をいただく場合があります。

また別の例では、足取りが悪くなり、仏壇に供える水を運ぶのにこぼれてしまう、というお悩みに対して、他の方が発見したやり方をお話しするということもありました。

持ち手つきの200mlアルミの計量カップに、仏壇用の小さな湯呑を入れて運ぶという方法。多少揺れても、計量カップの部分が水を受けとめてくれるので床にはこぼれません。

出会った方から教わった歌やアイディアを他の誰かにつなぐこと、これも「現場で働いてきてよかったな」とやりがいを感じる場面のひとつです。

⑥人生の先輩である高齢者からアドバイスをいただく

生活相談員とわたしとが、サービス担当者会議の時間を忘れて遅れて参加してしまった日、わたしと相談員に「人としての教え」をいつもとは違った表情でご指導下さったMさん。

普段、体を動かすことが好きなMさん。認知症の症状で散歩に出ると家に戻れなくなる。固い話をすることはこれまでなかったけれど、その日「会議に遅れてしまいました」とわたしが言うと、「本当に大事なことなら忘れるはずはない。その用事をどれくらい大事に思っているかだぞ」と、教えをいただいた。

それから、同居嫁の立場をうまくやり抜くコツを教えて下さったSさん。
すき焼きの日は、台所で自分だけ先に牛肉を食べておき、いざ家族にふるまうときは「お義母さんもみんなもたくさんお肉食べてね」と自分は食べるのを控えながら、にこにことして言うように。

当時は半分冗談のように受け止めていたけれど、今となれば「自分を犠牲にしない。自分が満されている状態なら、機嫌よくふるまえて周囲ともうまくいく」という、深い教えだったと捉えられます。

⑦一緒に行事や物事を楽しむ

介護する/される関係や、管理する/されるの関係では、介護の仕事の真のやりがいには届かないどころか、遠ざかっていくと感じます。

ちょっと腰かけて一緒にお茶を飲む。このことすら叶わない施設がどれだけ多いか。
相手が求めているのは、「脱水になるから残さず飲んでください」と管理的にお茶を準備してもらうことなのか、「一緒にお茶を飲みましょう」とそばに腰かけて目線を合わせながらホッと一息つくひとときなのか。

行事や物事、とタイトルにあげましたが、あいさつする・体温を測る・配膳をする。毎日の当たり前のような関わりの瞬間に丁寧さと心を込められないのなら、すべてはこなすだけの作業になります。

やりがいも理想の介護も、遠くにあるわけではない。気づかぬうちに自らチャンスを放棄している可能性もあるのです。

⑧自分の特技を活かす

職員それぞれに活躍の場があると、職場での役割とやりがいが得られます。手作業が得意なら、季節の作品作りをする。おけいこ事をしているなら、イベントで披露する。洗車が好きなら、社用車を洗車。ガーデニングが好きなら花壇の管理を。利用者をおひとりでも誘えば、ご利用者の楽しみにつながる可能性もあります。

わたし自身は人前で話したり企画を考えたりすることが好きなので、行事の係や院内研究発表などを率先して引き受けてきました。

特技を活かす機会については、与えられるまで待つのか、すでに機会があるけど遠慮するのか。さらには、自らの特技を活かせないだろうかと機会を創り出すことを考えたり、上司に提案していくところまでするのか。自らやりがいのある仕事に変えていく、ということもパワーを要しますができないこともないのです。

施設は生活の場ではあるけど、生活と密接している料理や余暇活動などから遠ざかってしまいます。職員の特技が、ご利用者の生活に潤いをもたらす可能性は大きいです。

⑨さし入れや検食をいただく

ご家族様からのお心遣い、上司からの差し入れは、気持ちが上がります。心身ともにハードな業務の休憩時間にいただくおやつは本当においしく、パワーの源になります。(心身にかかる負荷を、食べることで紛らわすという心理が見え隠れしますが…)

また、施設によっては「検食」という当番が回ってきます。ご利用者に提供する前に、食事の味や硬さ、彩りなどを確認する味見役。厨房のスタッフが作ってくださる食事をいただけることも、わたしにとっては楽しみのひとつでした。

食べることに限らず、例えば「施設にやってくる福祉用具の営業マンがイケメン」というような自分なりのささやかな喜びを見つけられるその姿勢は、現状を嘆いて終わるところにはとどまっておらず、上手な対処法や心構えだと思うのです。

⑩どんな時に高齢者は笑顔になるか?

ご利用者からの「ありがとう」や笑顔がやりがいである、と本記事の始めでお伝えしました。自分の技術や経験を使って相手の助けになったことで、感謝や笑顔をいただけるということはもちろんあるのですが、もっともっとシンプルにお互いが笑顔になれる方法があるのです。

しっかりと目線を合わせ、見つめ合い、握手することです。
見つめ合うこと、触れ合うこと。今この瞬間にお互いの心を合わせること。

医学的知識や介護の常識みたいなものを前面に出して相手を管理コントロールするような関わりや、介護する/されるの関係のみでは、真のケアからは遠ざかり、やりがいを見失うと考えます。

《ケアの定義》
ケアとは最も深い意味において
他の人格の成長や自己実現を援助すること

ミルトン・メイヤロフ

実際に明日、実践してみませんか。

ご利用者の目をしっかりと見て、手を取り合って「おはようございます。今日もよろしくお願いします。」お互いに癒しが訪れる、もしかすると、やりがいを見失っているあなたの方により大きな癒しが訪れることでしょう。

わたし自身は、介護施設で行う「笑いヨガ」にその実践を取り入れています。

https://waraiyoga-ooita.hp.peraichi.com/

見つめ合い手を取り合ってほほ笑み合うと、これほどに幸せな瞬間はないというほどのありがたさで心身が充たされます。

介護職員に対するやりがい搾取について

ここまでは、介護職にやりがいを見出す心構えやヒントについてお伝えしてきました。
一方、「やりがい搾取」という介護現場の実態が、問題として挙がっていることについて取り上げます。

奉仕の心や優しさの搾取

介護職員の「人のために自らの心身を使う」「相手がよりよい状態に向かうよう、どのような価値も言動も受いったん受け止める」といった奉仕の心・倫理観・優しさに、社会や雇い主、ご利用者などが甘んじ、それらをいいように用いることを「やりがい搾取」と表現します。

人員不足のため休日返上での出勤、無報酬に近い時間外労働、利用者からのセクハラや暴力などが現場で起こっているにもかかわらず、問題として取り上げられることもない実態があります。

介護職自身が自らを搾取する思考

社会から求められる仕事であり、人の役に立つ大切な職業、きつくても賃金が安くても「本当にやりがいがある」そのように思って働いてきました。

介護職からリハ職になりましたが、日本のフルタイム労働者の平均月収には到底及びません。

反論があるかもしれませんが、わたしはやりがい搾取について、社会問題や構造の問題としてとらえるよりも、自身の思考の転換や自らその価値を示していく行動が必要だと考えています。

介護職を離れた時のあなたの生きがいは?

介護職へのやりがいを見失っているあなたにとって、今の仕事の中で再度やりがいを持つことが難しい場合もあるでしょう。

楽しさ見出すを秘策10選を読んでも、心が晴れなかった。そのような場合、仕事や人生を見つめ直すタイミングなのかもしれません。

あなたがこれからの人生で大切にしていきたいこと、それは今の仕事で満たされていますか?そうでなければ、改めて「何を大切にして生きていきたいか」ワークを通して一緒に考えてみませんか。

https://caresetu.hp.peraichi.com

まとめ

介護職にやりがいを見失ったあなたへ、改めて仕事の中に楽しみを見出せる秘策を、介護現場20年以上の経験からお伝えしました。

とはいえ、やりがいを取り戻すことだけがゴールではありません。
自身の人生や価値観を見つめ直すきっかけになれたら、と思います。