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現場歴20年超 作業療法士おすすめ!簡単&一瞬で盛り上がる介護レク5選

通所介護事業所などで行われる介護レクリエーション。

運営上必須のサービスではないものの、ご利用者の活動メニューとして多くの現場で取り入れらています。

実施するスタッフさんにとっては、内容を考え道具の準備をしたり、皆さまの前に立ち司会をしたりと、身体的な介護とはまた別のスキルやエネルギーを要するところです。

本記事では、現場で使えるレクネタを道具別に、進行のポイントや効果についても合わせて解説します。

介護レクとは

レクリエーションの語源は、re(再び)-creation(創る)といわれており、「気晴らしや楽しみ」といった意味、「心身を癒し新たな活力を取り戻すための活動」といった意味を持ちます。

介護現場では、主にご高齢者が充実した生活を送るための集団活動として、スタッフによるサポートのもとレクリエーションが実践されています。それらを介護レクと称しています。

介護レクの目的

人が集うことで生まれるコミュニケーション、ゲームの行方に一喜一憂するような感情の解放や気分転換。体や頭を使うことで心身機能や認知機能を活性化する。

「純粋に遊びそのものを楽しむ」という体験は貴重なことであると考えます。ですが、介護サービス計画の中では、対人交流の促進や心身・生活機能を維持向上するためのひとつの手段としてレクが位置づけられている場合が多いです。

おすすめの介護レク5選

新聞紙を使ったレク

初めに、新聞紙を使ったゲームです。

≪方法≫ 新聞紙で野菜や果物、道具をしっかりと包む。包んだまま受け渡しし中身を予想するゲーム。

≪準備物≫ ①新聞紙 ②野菜や果物 ③道具類 ④ホワイトボード

②野菜ならサツマイモ、ニンジン、玉ねぎ、果物ならリンゴ、夏ミカン…ある程度の重さや固さがあるほうが受け渡しの際に手ごたえがあります。旬のものを用いると季節を味わうことができるでしょう。開封後に手触りや香りも楽しめます。

また施設内にある道具類でも可能です。テレビのリモコン、未開封のハンドソープ、トイレットペーパー、お手玉3~5個…

≪進行のポイント≫ チーム戦、個人戦どちらも可能。コミュニケーションが活発な参加者が多い場合はチーム戦も盛り上がります。数名ずつの2チームに分かれ、相談しながら答えを出します。

個人戦の場合は、隣の席の方へ包みを受け渡しながら順番に答えていただきます。あらかじめ、ホワイトボードに「参加者数×包んだ物の数の表」を作成し、参加者の回答を書き込んでいき、最終的に全問正解の方を発表する流れを作ります。

新聞紙の開封は1問ごとに。参加者のどなたかにお願いすると良いでしょう。

また、回答が得られにくい・「難しい、分からない」というお声が多い状況であれば、包んだものすべてのリストをホワイトボードに表示しておくと、予想の手助けになります。

すべての最後に変わりネタで、500mlのペットボトルを包んでおき「中身はわかりましたか?そうペットボトルです。では何味の飲み物でしょうか?みごと当てた方には、おやつの時間にコップ1杯分プレゼント!」としめくくるのもアリです。

≪隊形≫ チーム戦は数名ずつの円(U字)、またはテーブルごと。個人戦はU字。隣が近いことで品物を受け渡しする動きが引き出されます。

≪効果≫ 物の重さを感じ取る際、触覚とはまた別の「深部感覚」が働きます。過去の記憶と照らし合わせながら新聞の中身を予想し、ものの名前を想起し、言葉で表す過程は認知機能を活発にします。なによりも新聞紙を開ける瞬間はワクワクした感情が伴います。

トランプを使ったレク

次は、トランプゲームです。有名な「ブラックジャック」をレクリエーション向けにアレンジしました。

≪方法≫ 順番に引いたカードの合計が21に近いチームの勝ち。21を超えるとアウト。

2チームで実施。まず片方のチームのメンバーにカードをひいてもらい、そのカードを全体に見せながらホワイトボードに貼ります。次のメンバーに引いてもらいまた読み上げながら縦に貼ります。

貼る度に「7+11は?」等、カードの合計を参加者に問いかけながらボードに書き込みます。

ここで合計が21を超える可能性が出てきますので、そのタイミングで次の順番の方へ「ひきますか?ひきませんか?」とご判断いただきます。迷っていると、周囲から「やめたほうがいい」などサポートの声が飛んできます。

18で「ひきません」となった場合、相手チームにチェンジ。同じように進行します。相手チームの合計が19、20、21なら勝利。21を超えてしまったら最初のチームの勝利です。

≪準備物≫ ①ジャンボトランプ ②ホワイトボード ③マグネット

①をぜひともご用意ください。参加者全員に見えるようジャンボが良いです!百均で手に入ります。

≪進行のポイント≫ トランプはあらかじめマークごとに分けておき、片方のチームにハート、もう片方のチームにスペードを使用。

本来のブラックジャックでは、絵札はすべて10とみなしますが、決まりごとが複雑になるため、参加者のご理解度に合わせてカード通りに数を扱うこともよいでしょう。

また、計算をより単純にしたい場合は、絵札をすべて抜いて、片方のチームにハートとダイヤの計20枚、もう片方のチームにスペードとクローバー同じく20枚を使用します。

「現在18です。あと何が出たら21ぴったりでしょうか?」「3!」「〇〇さん、ぜひ3を引き当てて下さい!」というお声かけもおすすめです。

経験上、初めはご説明に対して「何かわからん!」というお声が上がりますが、ゲームを始めると、「カードをひく、カードの数を足す」というシンプルな内容に参加者はすっかり夢中になられます。

≪隊形≫ U字または向かい合わせ。ホワイトボードが見え、チームの境が明瞭になる形

≪効果≫ 計算能力と判断力を使いながらも、運任せな部分が大きいので、参加者の心身状況を問わず楽しめます。

また、司会者が扇状に持ったカードを差し出すと「引くの?」とほぼ反射的にお相手の行為が促されます。ですので、ルール上決められたやり方というものを強要したり、お相手にとってなじみのない動きを理解していただこうと過干渉になったりせずに済むのです。

紙コップを使ったレク

こちらは紙コップを使ったゲームの紹介です。

≪方法≫ 競技者はふたりずつ。に紙コップの中にカラーボールを隠し、そのままシャッフルし横一列に並べます。対する相手と同時に紙コップを端から開けて、カラーの並びが相手と同じなら大成功。

≪準備物≫ ①紙コップ10個 ②カラーボール(2色~を合計10個)③テーブル

≪進行のポイント≫ カップを開けて、出てきたボールはコップの上面(ふせているカップの底)に載せると転がらず、また観覧者からよく見えます。

カップを開ける際は「せーの!」のかけ声を大きく行い、双方のタイミングを合わせます。次々に開けてしまわず、一回一回止めることでワクワク感が増します。残念ながら途中で色がずれた場合には次の開封のテンポを速めて良いです。

回数の工夫についてですが、開封ひとつ目で色が異なった場合、あっという間に出番が終わってしまいます。そこで、同じペアでカラーが合うまで挑戦。はじめから数えて最大5回まで行って次のペアに交代、といった形はいかがでしょうか。

まずは紙コップ2個、カラー2色(例:青、ピンク)から始めて、成功したら紙コップ3個(例:青、ピンク、オレンジや青、青、ピンク)へ移行すると、「やさしいとやや難しい」「成功と挑戦」のバランスがとれます。

参加者がやり方に慣れた頃、シャッフル前にこっそりと片側のボールを入れ替えます(例:青と青VS青とピンク)。すると期待を裏切る状況に反応が起こるかもしれません。

≪隊形≫ 競技のテーブルを前に配置し、観覧者はテーブルの前に集合。どなたからもカップが見える椅子の並べ方。

≪効果≫ 偶然性に頼ったゲームなので技術や能力の違いを問わず楽しめます。うれしい!残念!といった感情を純粋に解放、共有する機会を得られます。

バランスボールを使ったレク

4つ目のおすすめは、トレーニングに使用するバランスボールを使ったゲームです。

≪方法≫ バランスボールを転がし、床に置いた輪投げやフラフープの輪の中に止めます。

≪準備物≫ ①バランスボール ②輪投げやフラフープ ③ある程度のスペース ④壁や壁代わりになる椅子

≪進行のポイント≫ 競技者は5回連続で挑戦します。理由は回数を重ねるごとに力加減の調整や投げ方の工夫をご自身の感覚で行うことができるからです。

床に置く輪っかは、ひとつではなく5~7個。輪の太さ(床からの高さ)にばらつきがあって構いません。ボールの行方が最後まで分からないハラハラ感を増すために、転がしたバランスボールが跳ね返って入るセッティングが重要です。輪を並べた周囲に椅子等で壁を作ってください。

ボールの空気加減や投げる距離は参加者の声を拾い工夫をしていくと、みんなで作り上げるゲームといった雰囲気に持っていけます。

フラフープや輪投げがない場合、新聞で棒を作り端をつないで輪にすることも可能です。他の材料として、ホースの切り口に、ホース内径ほどの太さ・ホース両端を差し込んで外れないほどの長さの木切れを入れるとつないで輪にすることができます。

≪隊形≫ 向かい合わせに並ぶ。手前に競技者用の椅子。奥に輪を配置。観覧者の間を転がしたバランスボールが通過し輪へ向かう形。

≪効果≫ 身体的には、動作中の体の感覚を使い力加減や転がし方を調整する、フィードバック・フィードフォワードの機能が働きます。

スペースが許されれば、輪までの距離を遠くとることで、「えいや!」と大きなボールを転がすためにダイナミックな動きも引き出せます。

想像以上に、バランスボールは輪の中には止まらず外へ逃げてしまいます。「難しすぎる」という声も上がるのですが、スタッフさんが挑戦しても同様に難しいので、参加者に一体感が湧き、仲間のうちの誰かが成功することを期待し、達成したらみんなで歓喜するという状況が生まれます。わたしがこのゲームを推す一番の理由がここにあります。

ジェンガを使ったレク

最後に、ジェンガをアレンジしたテーブルゲームを紹介します。

≪方法≫ お手本の図形と同じようにジェンガを並べたり積み上げたりする

≪準備物≫ ①テーブル ②ジェンガ ③お手本の写真 ④大判のフェルト

②は写真でなく、その場でスタッフが組み立ててもよいのですが、平面を立体に読み替える情報処理過程が省かれてしまいます。写真でお手本を用意することをおすすめします。

≪進行のポイント≫ 写真のお手本数枚が2セットあると、参加者が大人数の場合でも2か所で同時に行えます。その結果、待ち時間が少なくなり間延びしません。

③のフェルトに、実は隠れた意図が3つあります。

・ゲームのプレイヤーであることの演出

・机とジェンガの色が似ているためフェルトでコントラストをつける

・順番が次の方へ移る際フェルトごとスムースに移動ができる

≪隊形≫ テーブルを囲んで6人程度ずつのグループ分けが最適。また、このゲームに限らずですが、やり方に助言を必要とする活動の場合、シフト上レクに対応できるスタッフさんの人数とグループ数が一致する編成を考える必要もあります。 

≪効果≫ 身体的には、空間認識能力を活用します。また、お隣の方と一緒に試行錯誤する場面が生まれ、コミュニケーションの促進に有効です。

まとめ

本記事では、簡単で盛り上がる介護レクを紹介しました。心身の状況に違いがあっても参加しやすく、勝敗が能力よりも偶然性によって決まる、という5選でした。

「疾病や加齢、住まいの変化などにより、これまでの交友関係や趣味・関心事がとぎれてしまった方々へ、可能な限り笑顔で活気ある時間をお過ごしいただきたい!」

介護レクを支えているのは、まさにそのようなスタッフさんの思いではないでしょうか。

事前準備もレク当日もプレッシャーはあるけど、レクリエーションが好き!というあなたのお役に立てたらうれしいです。

レクが苦手!というスタッフさん向けの記事、次回投稿しますね。