「介護リーダーをしているけど、もう疲れた」
「自分は介護リーダーには向いていないんじゃないか…」

この記事にたどり着いてくださったあなたは、そんな悩みやモヤモヤを今抱えているかもしれません。介護リーダーの育成環境もなければ、管理業務に集中できる時間もないまま現場を支える毎日。仕事に向かう足取りは、重いかもしれません。

でも、安心してください。

わたし自身も過去、現場で葛藤を抱えてきた一人だから、分かるのです。少し見方を変えれば、必ずその先には大きな喜びと成長があると。

本記事では、介護リーダーの役割について整理し、今のつらい氣持ちが軽くなるヒントとなる「これまで頑張ってきたあなたへの心の処方箋」を6つお届けします。

きっと読み終えるころには、この仕事に対する視野が広くなり、介護リーダーとしての仕事に誇りを感じられるあなたになっています。

介護現場におけるリーダーとは

介護リーダーは、現場のメンバーをまとめる役です。別の呼び名は、介護主任、ユニットリーダー、フロアリーダー、と事業所によって様々です。

チームの構成メンバーとして、介護士だけではなく、看護師やリハ職、送迎車両の運転士等が所属している場合もあります。

職務の範囲や動きも、組織の規模や形態で異なります。管理者とほとんど変わらない場合もあれば、あくまでも現場の長であり、経営や対外的な部分にはそれほど携わらないという立ち位置の方もいることでしょう。

ご自身の役柄に合わせて、この記事を読んでいただければと思います。

介護リーダーの心得

さて、あなた自身に「なんとかひとりでやり遂げよう」と抱え込む傾向があれば、少し立ち止まり、リーダーとしての心構えを見つめ直してみましょう。

チームメンバーを信頼する

責任感を持ち、「みんなの先頭に立って、誰よりも頑張らなければ」という考え方でリーダー役を遂行している人も多いのではないでしょうか。

・病状が重く身体的なリスクが大きい方の入浴介助は私が

・ご家族からのご指摘が特に多い入居者様の対応は私が

・本当はこの日に休みたい。でも休暇の希望日が重なるからチームメンバーを優先

リーダーを任される方は、介護スキルが高く、コミュニケーションスキルも高く、仕事ができます。ですが、チームメンバーに任せる・チームメンバーを育てる・よりよいチームを作る、といった俯瞰的で長期的な視点に切り替え、動いていくことが必要です。

よりよいチームとはどのようなチームなのか、また、どのようなチームをめざすのか、については、本記事の後半「介護リーダーの目標」の項で詳しくふれますが、欠かせない部分です。

チームメンバーをエンパワーメントする

介護リーダーの心得は先に述べた通り、「ひとりで抱える」のではなく、チームメンバーを信じて任せるということです。

それは、ご利用者の介護を任せる・業務の一部を任せるということに留まりません。チームメンバーのグッドポイントを見つけたら伝えたり、メンバーへ困りごとを相談しケアのアイディアを求めたり…。

「あなたを信頼していること」「あなたは大切なチームメンバーであること」をメンバーへ伝えて、自信を与え、能力を発揮させていくことなのです。

自己研鑽の姿勢

「何度伝えても分かってもらえない」「伝え方を工夫したけど変わらない」「分からないなら、どうして自分から質問してくれないのか」と、チームメンバーに、性急な変容を求めてしまう場面があると思います。

ですが、その時振り返るのは、自分自身の言動や心構えなのです。

自己研鑽とは、技術・知識のアップデートに限らず、内面のアップデート、実践の中で研いていく人間力のアップデートも含まれます。

「自分自身は、果たして、経営者の話を素直に聞いているか?」「自分からメンバーに聞くことをしているか?」そう問いかける姿勢を持つことがリーダーの心得のひとつです。

介護リーダー向き・不向きのチェックポイント

介護リーダーに向いていないのではないか、と悩むあなた。ではどのような人がリーダーに向いているのでしょうか。ここで一緒に整理をしてみましょう。

コミュニケーション力

「コミュニケーションが得意」というと、他者と円滑に話ができる、といったイメージを持つ方も多いと思います。ですが、次の2つがリーダーにとっては大事なコミュニケーションになります。

①話を否定せずに受け止める聴き方

「自分のことを分かってもらえた」「自分の話を聴いてもらえた」という感覚が、信頼を築いていく一歩目となり、この先、意見やアイディアを交わしやすい職場の雰囲気を創っていきます。

これらは、チームメンバーに対してだけではなく、ご入居者ご利用者にとっても同じです。

また、話を受け止め、しっかり聞いてもらう体験をしたメンバーは、今度はその体験をご利用者へお渡しすることができます

②気づきを与え、やってみようと感じられるように導く質問力


例えば、左半身不全麻痺のある杖歩行の男性の歩行介助についている場面。
チームメンバーは男性の右側に立っています。リーダーがメンバーに言います。

A「右側じゃなくて左側に立ってください」
B「歩行介助の際、非麻痺側と麻痺側どちらについたらより安全ですか?」
C「左に立っている理由がありますか?」
いずれの声かけがメンバーの気づきと行動を促すでしょうか。
答えは、BまたはCです。

日々使う言葉、コミュニケーションは丁寧に見つめると、自身の学びも相手との関係も、より深められるのです。

判断力と対応力

リーダーは、呼ばれますね。チームメンバーからも、ご利用者からも、業者来客、他部署からも。

ご利用者の体調急変時、ご入居者間のトラブル、タイムスケジュールや介護保険上の決まりに沿って業務を進めたいけどスムーズにいかない場面、リーダーに対応がめぐってきます。

現場を熟知し、これまで積み重ねてきたケアのスキルがあるからこそ、特に判断力やより困難な場面への対応力を期待され、「呼ばれる人」になります。

これかから先、「経験や知識に基づいた判断と対応」にとどまらず、‟理念を実現する”という視点からの対応に切り替えていきませんか。

施設の中での判断、特に相手とのマンツーマンのやり取りでは、チームメンバー個人個人の価値観に任せられている場面が圧倒的に多い。もしくは一見「健康のために良い」とされる一般的な基準。それらに拠っている限りチームがまとまることはないでしょう。

ひとつ例を挙げます。
昼食のお膳。ご利用者Sさんは初めにデザートのゼリーに手を伸ばしました。「それは、他を全部食べてからにしてください」とスタッフが制する。それでもSさんはゼリーを食べようとする。スタッフは手の届かないところにゼリーを置く。

「主任、Sさんがどうしてもゼリーから食べようとして、ごはんとおかずが後回しになります。」スタッフがリーダーに報告します。一般的なマナーやこれまでの教育課程の中では「デザートが最後」かもしれません。栄養学的にも、たんぱく質やエネルギー源を摂ってほしいと考えるかもしれません。

ここで、施設の理念が「自分らしさが尊重されるあたたかい暮らしの実現」だったとしましょう。

それでも、ごはんやおかずが先です、と言いますか?

「Sさんの今の氣持ちを尊重しましょう。ご本人さんらしさを大事に、ゼリーを先に召し上がっていただきましょう。」「なんならゼリーパーティをひらきましょうか。」

リーダーが判断・対応の根拠を明確にみせていくことで、「同じ方向を見て進もう」とチームの足並みがそろっていくと考えます。

責任感と人間力

これも、例を出してお伝えします。
ご利用者がデイサービスの利用を終え、自宅へ帰りついたころ、ご家族からこのような電話がありました。

「うちの母の着替えの中に、他の人の下着が入っていました」

ここで「わたしは入浴を担当していませんので…」と応答する人は、責任感も人間力もまだまだ未熟と言えます。自分自身を守る「防衛反応」は誰にも生じます。

ですがリーダーは、自らの保身は脇に置いて、責任感のある言動を選択します。
先ほどのご家族からの連絡に対して、「え?」と一瞬ためらいながらも「ご連絡ありがとうございます。大変失礼いたしました。」と答える。

役を通して、その積み重ねによって「よりリーダーになっていく」といえます。
成熟度が上がれば、「え?」と思うこともなく、話を受けることができるでしょう。

観察力・共感力、チャレンジ精神・行動力、謙虚さや配慮、それら「人間力」もリーダーに必要な資質です。持ち得ている人がリーダーになるのではなく、リーダーの実践の中で身につけ、磨いていくのです。

介護現場のリーダーの役割

どれほどの役割と業務を任されているのか。ぜひ「よくやってる」とご自身を労う氣持ちでお読み下さい。ここでは大項目、中項目までの整理ですが、小項目まで整理すれば、50種は軽く超えるほどです。

経験を積んだプレーヤーとしての役割

  • 管理業務と並行して現場での業務を行う
  • 現場の課題や業務改善案を見出す
  • イベントや法定避難訓練などの企画やリード

業務の管理

  • スタッフの勤務を管理しシフト表を作成する
  • 入職者の受け入れ準備(小項目:制服・ロッカー・オリエンテーション…)
  • 利用実績、評価、計画書、記録の管理
  • マニュアル整備

連絡調整役

  • 経営者や上層部とのやり取り
  • 他部署とのやり取り
  • ケアマネージャーとのやり取り
  • ご家族とのやり取り
  • 関係業者とのやり取り
  • 外部ボランティア等とのやり取り

チームメンバーの教育

  • 身体介護のスキル、生活支援のスキル、コミュニケーションスキル
  • 施設の方針やルール
  • 介護保険の知識
  • ご利用者ごとの心身状況や個別対応を指導
  • フィードバックやミーティング実施

「もっと他にもやっています!」「うちはこんな業務もあります!」と、あなたの声が聞こえくるようです。

介護リーダーの目標

さて、今のあなたのモヤモヤの原因は、「めざすところが決まっていない」ことから起こっているかもしれません。目標設定の機会がなかった場合、これからの方向性を決めることで、混沌とした現状に解決の糸口が見つかります。

介護リーダーがめざす方向性

「チームでどこをめざすのか。」
リーダーを任されて、この問いを立てたでしょうか?
質問してくれる人がいる環境ならば、ありがたいことです。ですがリーダーを育てる仕組みがない組織の中では、自ら問わなければいけないし、それをメンバーと共有するところからがスタートです。

ご利用者のサービス計画書を立案するソフト内に、目標の例文が組み込まれているのと同じように、介護リーダーの目標設定についても、カテゴリー別に整理された情報があります。
それらの例文をヒントに、自分自身の介護観に沿うもの、メンバーの介護観が叶えられるもの、施設の理念を実現できるものを目標として設定しましょう。

上層部から目標を指定される場合も考えられますが、ぜひ介護リーダーを任されたあなた自身の、介護への思いを叶えるチャンスととらえてみませんか。

目標の例文

業務の効率化

排尿のタイミングを予測・記録する専用デバイスを夜間の尿漏れが多いご入居者3名へ導入。夜間帯の寝巻と寝具の総交換を3か月後0に。

ケアの質向上

6か月後アンケートで身体ケア、コミュニケーション、生活の質と生きがい支援すべての項目9割以上の方に満足とお答えいただく

安全管理や法令順守

雨天を想定した、避難訓練が未実施。屋外避難後の待機方法などをマニュアル整備し、3か月以内に共有。今年度の2回の訓練は、昼夜とも雨天を想定して実施。

集客や収益

デイサービス体験・見学の方へ、足を止めてのあいさつ徹底。担当職員は相手の知りたいことを3つ以上リサーチ、その点に対してご回答をして、新規ご利用者毎月2名。

スタッフの育成

新人職員との個別話し合い15分を1か月間は週2回実施。3か月後の離職0へ。

期間が明確か、結果が数値で測れるか、が目標設定のポイントです。

介護リーダーの悩み

ここでは、介護リーダーから直接聞いた声、リーダーと共に仕事をして感じたこと、そしてわたし自身の経験をもとに整理しています。もしも「ここにはない悩みを抱えている」という場合には、お問合せ下さい。

大変さを分かってもらえていない

今でも思い出す光景があります。
30代前半の介護リーダーが「全然わかってない!こんなにやってるのに、まだ求めてくる」と、1日の業務が終わろうとする頃、長い廊下の向こうで、言葉を吐き出していました。

経営者が求めるもの(デイサービスの新規受け入れ)に、現場の対応が追いつかない。そんな状況でした。

…「介護のDX」「その手段としてのIT化」現場の変革や効率化が言われる中でも、なお、肉体・感情の両方を精一杯使ってご入居者やご利用者へ対応している働きぶりに、ねぎらいや承認の声がかかれば、気持ちは違うでしょう。

ねぎらいのひとことが欲しい!だけど、リーダーは、チームメンバーにそのねぎらいの声をかけていく立場でもあります。

自分自身に「かけてもらった体験」があると、再現しやすい。声をかけてもらったチームメンバーは、ご利用者にその一言を伝えられる人に育つでしょう。チームメンバーからリーダーに「お疲れ様です。ありがとうございます」と返ってくるかもしれまん。

一方、「分かってほしさ」を前面に出すことなく、周囲からの承認などは氣に留めない様子で、淡々と働く方もおられます。大人だなぁ(精神的に成熟しているなぁ)と感じていました。

「こんなにやっているのに!」「分かってほしい」「認めてほしい」この辺りの思いが強く出てくる場合には、いったん「自分が自分を認める」といった内面をみつめる時間が必要であると感じています。

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給与面での評価が見合わない

  • 外部への対応ができるよう、日勤帯に常駐するシフトとなり、夜勤が減ることによる減収。
  • 業務量は3倍に増えたと感じるが、役職手当は数千円。

リーダーをリーダーとして育成する、という経営者側の決意が伝わる待遇にして頂きたいところです。ですが少しだけ視点を変えてみましょう。自分自身だけでなく、「給料を上げて欲しい!」とチームメンバーも、それぞれの立ち位置で、そう思っているのではないでしょうか。

自分だけが、自分ひとりでがんばっているわけではない。リーダーはそこに氣づき、どう行動するか。今わたしにリーダーの役をいただくチャンスがあれば、経営者にこう伝えたいです。「みんな〇〇達成のために毎日頑張っているから、昼休みに高級アイスで慰労会をしたいです。特別予算は出ませんか?」と。

人間関係

介護の現場は、メンバーの経歴や背景が様々です。多様である理由のひとつに、「採用の基準がない」「人事や採用担当者がいない」ことがあげられます。そのことが、指導の難しさ、人間関係の難しさを招いてしまいます。

客観的な適正判断やスキル評価のノウハウはなく、「印象や雰囲氣のみ」で採用、入職の時点でミスマッチが起こっている可能性があります。

介護現場には、採用の基準はないけど、もし基準があっても適任者が来るのを待ってはいられないというような、危機的なマンパワー不足の現状もあります。

繰り返しの指導が伝わらない、指導に対して相手の態度が反抗的、学ぶ姿勢が見受けられない。指示を待つのみでただ立っている、ご利用者とコミュニケーションがとれない…

人間関係(続き)


ただ立っているメンバーがいると、今度は、他のチームメンバーから「あの人は全然動かない、どうにかしてください」とリーダーに訴えが寄せられます。
「誰がこうだ、誰がどうだ」と、この手の話を聴くのは、精神心理的に負担がかかります。

ある事業所の主任は「そこに振り回されないと決めました」とおっしゃていました。「どちらが良くてどちらが悪いという評価を手放した」ということだったのだろうな、と改めて思います。

そこに通ずるかもしれませんが、わたしは、40歳半ばから、このようなことを考え始めました。

「多様性に寛容になる。その姿勢でなければ、スタッフだけでなく、多様性のあるご利用者や社会を認めないことになる」

「ケアの質を上げたい、より良いサービスを提供したい。でもここにいるみんなで今日1日を無事に終えられたら、まずはそれでOK」

目標志向や方向性一致の大切さを語る一方、「理想、完璧さ、こうあるべき、こうすべき」を求めすぎると、人を斬る=評価し切り捨てることになる。そのことは自分自身を苦しめることにもなるのです。

業務量のキャパオーバー

現場の業務を行いながら、管理業務をこなす。
その現場の業務量がそもそも多いので、2~3人分いえ3~4人分の仕事を抱えているのが、わたしから見た介護リーダーの姿です。休みの日にも出勤している…。

「現場が忙しいから現場を優先」と考えてしまうのですが、「ご利用者への対応が不十分にならないように」という理由のほかに、チームメンバーの視線にとらわれている、という心理はありませんか?

「リーダーなのに、忙しい時に事務所にこもって」「手が欲しい時にパソコンの前にずっと座ったまま」「主任は、現場の大変さを分かってくれない」そのような声に対する恐れ。

もし、この恐れがあるならば、「抱えている業務を理解してもらう」ことから始めませんか。メンバーの中には、介護保険内のサービスを提供している事業所でありながら、介護保険の知識がない人もいます。

介護保険下で管理すべき書類や法定の研修開催、それだけでも相当な時間と労力を要します。勤務表についても、作成したことがければ、どれだけの時間と配慮によって組まれているか、想像がつかないと思うのです。

リーダー業務を見える形で示す。「伝えるために書き出す」と同時に「メンバーに仕事を担ってもらうために書き出す」のです。「自分がやらなければ」と思っていた業務の中には、メンバーに頼めるものが必ずあります。

過去のわたしは、現場やご利用者を最優先してきました。その分、書類に大幅な遅れが出ました。のちに指摘され分かったことは、必要な管理や法令の遵守が行われていなければ事業所は存続できない、という当たり前のことでした。

仕事をメンバーに割り振り、リーダーはリーダーが行う仕事、リーダーしかできない仕事を最優先に行える環境を、自ら整えて下さい。どうしたら整えられるかを、ぜひ考えていきましょう。

考え方の違い

様々な関係性の中での板挟みが起こり、相手から求められることと自分の方向性の違い、が起こり得ます。

経営者と現場

経営陣の方針、多くの場合は「あたたかい」「寄りそって」といった、抽象的な表現である理念の達成についてよりも、利益や人数といった数字での目標や方針を提示されます。こちらとしては、ご利用者の心身の良好な状態に一番の関心がある。その違いに、過去のわたしは、「虚しさ」や「怒り」に近い感情を覚えていました。

管理者とチームメンバー

例えば、管理者からは「現場に移乗用リフトを導入します。まずはデモ機の操作指導を」との指示。現場で実践すると、メンバーからは「機械を使わず、2人介助で行った方が早いです。リフトは実用的ではありません」と反発があり板挟みとなる。

家族とご利用者本人

家族の要望は「歩かせないで欲しい。家でごそごそされると困ります。」ご本人の希望は「車いすに乗らず、歩きたい。」この手の板挟みは多いです。

ないことを願いたいですが、チーム間でも似たことが起こります。リハビリスタッフが歩行のトレーニングをすると、介護スタッフが「夜間ひとりで歩きだして困るからやめて下さい。」
先に述べた、理念に基づいた判断ではなく、個人の価値観と都合のみに基づく発言です。

介護リーダーは、それぞれの要望の間に立つ場面が多いのです。

介護リーダーをやめたいと思った時の対策

「もうやめたい」と思うときは、つらい状況であるとき。「向いていないかも」と思うときは、自分の性格やスキルが問題なのではなく、環境や現状と自分の思い描いている状況とが大きくかい離しているとき。

理想と現実の差はモチベーションになることもありますが、あまりにかけ離れていると動けなくなります。

ここでは、まず自分自身の心を守るための対策をお伝えします。

抱え込まない

やめたい、つらい、その気持ちを誰かに話しましたか?
仕事を抱え込まない、ということももちろんですが、悩みや氣持ちを抱え込まない。まずは、話してみませんか。身近に他部署のリーダーや、心をゆるせる仲間がいればぜひ聴いてもらってください。

それから、最近知ったことですが、公的な労働相談やメンタルヘルスの窓口もあります。

悩んでいることを整理

今、何に悩んでいるのか。リーダーをしていて辛いことを書き出してみる。

・自分は何に悩んでいるのか。
・それは誰の問題、または何が問題なのか。
どのような状態を望んでいるのか。

問いに答えていくと、少し氣持ちが整理されたり、氣づきが生まれたりします。それは、状況に対する捉え方を変えてくれるきっかけです。

逆に、介護リーダーをしていて良かったことを書き出してみるのもおすすめです。「ない」ものではなくて、「ある」ことに意識が向き、満たされた感覚が少しずつ取り戻せるかもしれません。

役は辞めることができる

リーダーがリーダーを降りる、その選択肢もちゃんとあります。
降りるなら退職しなければ、ということもありません。

役職のみを辞めるのか、異動するのか、別の施設へ行くのか、別の業界で働くのか、それぞれにメリット、デメリットがあります。

わたし自身の体験としては、デイサービスセンター長から訪問リハビリテーションへの部署異動を命じられました。その後、再度異動で、デイサービスに役職なしの職員として戻ってきました。

自分に至らないところがあっての降格・異動でした。味わったことのない喪失感のあと、2~3日で楽になりました。毎日忙しくご利用者に関わっていたので、落ち込む暇もなく、人目も気になりませんでした。そして、デイサービスに戻ってきてからは、センター長の立場を一度経験しているので、リーダーを気遣う声かけが、ささやかながらできていたと思います。

介護士のキャリアアップとは

介護リーダーの役を担っているいうことは、「キャリアがアップした」ということです。経験値が上がり、自分自身の可能性を切り開いてきたといえます。今は、リーダーの役が辛い状況であっても、今後、「役を担った」その事実に必ず助けられる場面が出てきます。

キャリアアップの可能性が知られていない現状

「キャリアアップ」という言葉にふれる機会もなく、毎日精一杯、高齢者ケアに向き合ってきた方も多いと思います。

わたし自身は、せっかく介護の分野で働くのだから「ヘルパー2級の資格(当時の)をとろう」と研修に行かせてもらい、その4年後には作業療法士の養成校に入ることとなりました。

このようなステップアップの流れをキャリアというと知ったのは最近です。
「学びたいから学んでいる」、わたしにはその意識しかありませんでした。
キャリアアップとは、キャリアウーマンと呼ばれるような、スーツで仕事をする方々の間ににだけ存在するものと思い込んでいました。

(今は、小学生から「キャリア・パスポート」を使ったキャリア教育が行われています…)

キャリアパスのひとつに、介護リーダーや施設長になるという道があります。介護リーダーを担っているあなたは、ここまでキャリアを積んできているのです。

国家資格取得後に用意されているキャリアパス

介護福祉士や作業療法士などの国家資格を取った後、それぞれの協会に所属すると、研修のカリキュラムが組まれてあります。協会が、スキルアップやキャリアアップの道筋を整えてくれているのです。ですが協会に所属していない有資格者が増えているのが現状です。

学びの場や情報が集約されず、拡がっている。どこで、誰から、何を学ぶかを自分でピンポイントでしぼり効率的に学ぶ。学び方が変化してきたという印象を持ちます。同時に、キャリアアップの方向性も、多様化しています。介護士のオンラインコミュニティを事業化するといった道を確立している人もいます。

具体的なキャリアの方向性

「山脈型キャリアモデル」と呼ばれるモデルがあります。介護士のキャリアアップは、「管理職を目指す」というひとつのルートだけではなく、得意分野を組み合わせて複数のキャリアを自由に選択できる体系を表しています。

→引用「介護人材確保の現状について」厚生労働省

【複数のキャリア】

  • 現場のプロ…認知症ケア、コンチネンスケア、看取りケアなどの専門性を極める
  • 支援、相談…生活相談員や介護支援専門員へ。家族相談や地域連携の牽引者へ
  • 運営、管理…事業所の運営、スタッフのマネジメントを担う施設長へ
  • 教育、研修…若手の育成、介護技術の指導、教壇に立つルートもあり

新たな働き方

SNSを活用したオンラインでのコミュニティ運営や、自費での介護サービス事業を立ち上げる人は増えています。

  • 月額の会費を徴収するオンラインサロン
  • 資格取得、キャリアアップのサポート
  • ブログで有料記事の提供
  • 転職の仲介、施設探しの仲介
  • 介護美容
  • 病院の付き添い
  • 旅行支援事業
  • 地域でのコミュニティ構築
  • 夜勤専従と副業の組み合わせ

キャリアアップ・目標志向がすべてではありません。特につらい時期には、これまで歩んできたプロセスを十分に認め、労わりたいそうしながらも、キャリアについて整理することで、少しでも未来や展望が見えれば、と思いお伝えしました。

介護リーダーが明るくなれる6つの処方箋

①介護リーダー役は貴重なチャンスである

私自身の体験です。リーダーを降りることと部署異動が決まった後、「もうなーんにもない」というような喪失感を味わいました。

「会社に尽力してきた人が定年退職をした時、こんな氣持ちなのかもな」と想像しました。「今まで味わったことのない感情」「誰に寄り添う感情のバリエーションが増えたな」と無気力の状態ながらも感じていました。

リーダーは、まず役を任命されなければその機会はありません。誰にでもあるわけではない貴重なチャンスを頂いていたということを、私は役を降りてから実感しました。

②介護リーダーは人とのつながりが増える

リーダーは各種会議に出ます。外部との連絡調整をします。ご家族と話します。
法人内だけで考えても、他部署のリーダーや経営者、事務長との関わりは、リーダーではないメンバーと比べて格段に多いです。

ご利用者やご家族へ、「現場の代表」として、詳細な心身状況を伝える場面があります。通常、ご家族とのやり取りを担う生活相談員から「現場でのより詳しい状況」を尋ねられることもあるでしょう。

他にも、他事業所のリーダー、ケアマネ―ジャーや地域包括支援センターの職員、福祉用具の業者、制服関連、フロアマットや給湯器など備品メンテナンスの担当者、各種営業への対応、幅広い方々と接点を持ちます。

それらは、リーダーを務めて得られる人脈です。「自分を覚えてもらうには、長を引き受けるのがよい」とも言われます。

「相手を知っている」「話したことがある」「あるご利用者を一緒に担当した」このようなことが、別の仕事場面で活きてきます。別の仕事場面というのは、例えば、「新規ご利用者対応の会議」や「外部研修でのグループワーク」「地域での介護予防企画」などです。相手と面識があることで、コミュニケーションがスムーズにいくのです。

この先、独立開業などを考えている場合には、リーダーの役を通して出会った方々とのご縁が、必ず活かされることでしょう。

③自分自身が選んだ豊かな選択である

リーダー役を受けることを最終的に決めたのは、誰か。
「他に人がいなくて、その気はなかったけど引き受けた」「周囲に推されて断れなかった」
このような場合でも、最終の決断は自分自身です。

「選べる環境にいる」という認識や、「自分が選んでいる」という主体的なもののとらえ方は、幸福感の基となります。精神心理の話にとどまらず、健康状態や寿命にまで影響するということが、研究で分かっています。

ただ、状況によります。「自分の幸せや豊かな経験のために、自分自身で選んだこと」とは、とても思えないほど行き詰まり、重責を抱えすぎている場合には、「だれか頼れる人へ話す」ということを優先してください。

④物ごとの捉え方が変わる

これまでは氣がつかなかったことに、氣づけるようになった。リーダーになってからそのような変化を感じませんか?

・いち職員だった頃には、「現場は回っていないのに、次々に新規のご利用者を受け入れる」と雇い主への不満ばかりだったが、経営者側の視点を知り、職員や組織を守るための役割があることを知った。

・チームメンバーが楽しく働けているかどうか、チームメンバーの表情や言動をしっかりと観るようになった。

・施設の運営基準や、介護保険の知識に詳しくなり、国の施策について動向を追うようになった。

⑤介護リーダーは若手の希望となる

「成長できる」という期待の持てる環境、そして介護リーダーのスキル・ふるまいは、特に若手の希望になると考えます。

このような話があります。
ある特養では、介護士をめざす実習生が毎年くるものの、その実習生たちが卒業後そこに就職した例は一度もなかった。昨年度、現場のICT化に踏み切り、インカムや見守りセンサーなどを導入したら、実習生が就職した。

「未来の展望がある」「自分自身を高められる」そのような現場であれば、若手にとっての希望となり、魅力ある仕事として認識してもらえます。そしてそれは、機器に限らず、キャリアを積んだリーダーの姿も、若者に影響を与えます。

⑥リーダーという役は、ケアの実践そのものである

哲学者ミルトン・メイヤロフは「ケア」をこのように定義しました。
ケアするとは、単なる一時的な世話や感情ではなく、相手の成長と自己実現を最も深い意味で助けること

・ケアする側を助けるプロセスを通じて、自分自身も成長し自己実現を果たしていく

・相手が自分らしい生を全うできるように、相手の世界をその人の視点から理解しようと努める

ケアというと、子どもや高齢者の世話をする、そのようなイメージを持つ人もいると思いますが、そうではないのです。介護リーダーとチームメンバーとのやり取りは、互いの成長を支え合う、まさに最も深い意味での「ケア」なのです。

まとめ

「介護リーダーの役に疲れた」「自分は介護リーダーには向いていないんじゃないか…」そう思うあなたへ、心が軽くなり、明るい氣持ちになれる処方箋をお届けしました。

日々の業務、本当にお疲れ様です。

介護の仕事を始めた頃の思い、リーダーを引き受けたときの決意がよみがえりましたか。それとも、これからの自分の人生への期待がわずかでも湧いてきましたか。

まだ何も解決策はつかめなくとも、この記事を読んで、あなたの心の中が少しでも穏やかに、整理されたらうれしく思います。